— あらためて、この旅で一番の「挑戦」は何だと思いますか。
丁子谷 自分から話さなきゃってことは、本当に思いました。外国だと言葉も通じないし、顔色を見ても分からないんですよね。環境も違うし、性格もそう。とりあえずしゃべらないと何も伝わらないことに気づきました。
佐 藤 犬ぞりをする前に結構空き時間があったんですけど、そこに大きな雪のスライダーがあったんです。レストランの店員さんに「怖いからやってみなよ」と言われて、行ってみたら、看板に『自己責任』って書いてあったんですよ(笑)。怖くて迷ったんですけど、せっかくの機会だしと思って、思い切ってトライしました。2人乗りの浮き輪みたいなやつでスライダーを降りたんですけど、すごく怖かったです。動画も撮ってもらったんですが、この世の生き物じゃないような声を友達と出してました(笑)。
大 関 私は全部が挑戦だったかなぁ。本当に人見知りだったから。その中でも大きかったのは、一人ひとりの名前を聞いて写真を撮ったこと。今までしゃべらなかったのに、それをやるには結構勇気が必要で。でも、話しかけるときに名前で呼ぶことで、距離がだんだん近くなっていって。一番の挑戦はそれですね。あと、子どもたちにツバル語で教わったことを日本語で教えてあげる動画を撮ったんですけど、これも最初は緊張してどう教えようか迷ったんですけど、勇気を出して話しかけたらみんな興味を持ってくれました。
— 丁子谷さんは、普段はスマホではなくカメラで撮るんですか。
丁子谷 カメラはこれが初めてです。結構楽しくて、持っているとすぐ撮りたくなっちゃう。雨が降っていたらこの色の方がきれいに写るな、とか、夜だったらこの方がいいかな、とか。2日目、3日目ってどんどん分かってきて、すごく楽しかったです。
— 佐藤さんはどうでしょう。普通のカメラとはまたちょっと特性が違うものですが。
佐 藤 これを選んだ理由が、寒さにも強いことや、耐久性だったので、犬ぞりのときとかはすごく役に立ちました。
— 二人は普段スマホで写真をよく撮りますよね。スマホとの違いはいかがですか。
丁子谷 この写真をパソコンで見返したときにとても高画質で、こんなに違うんだって思って、こっちの方がいいじゃんって思いました(笑)。
大 関 プリントにしたら、もっと綺麗さが分かりますよね。
— 今回撮っていただいた写真を「PhotoZINE」というサービスでフォトブックに仕上げました。
大 関 私は元々フィルムカメラがすごく好きで、デジタルカメラはあまり使ったことがなかったんですけど、今回のツバルで初めてこんなに撮って、こんな仕上がりになるんだ、と。鮮やかだし、綺麗だし、驚きですね!
— 丁子谷さんのお気に入りの写真を教えてください。
丁子谷 この2枚に関しては、街の屋根の色が日本にないおとぎの国感がありますよね。色味もすごく好きなんですけど、建物の後ろに突然現れる都会の感じとか、非現実な組み合わせがすごく好きです。
— エストニアは「電子国家」と呼ばれています。実際に生活してみていかがでしたか?
丁子谷 私は行くまでは現金主義で、日本でもカードを持ったことがなかったんですけど、エストニアには作って行きました。本当にほぼどこでも全部使えたので、カードで支払うことにハマっちゃいそうになりました。
— 佐藤さんはいかがでしょう。
佐 藤 オーロラがきれいに撮れていたのでこの2枚!どちらもレベル4のときに撮ったものです。オーロラはその時々で形が変わってしまうので、同じものは撮れないんですけど、とてもきれいに写っていました。
— 『SHUTTER MISSION』のキャッチコピーはズバリ「撮るはずのなかった1枚、撮ってこい」です。1枚だけ選ぶとしたらどれを選びますか?
丁子谷 私はこの写真を!この場所は、ここの住人の方たちがセーターを売っている通りです。ちゃんとしたお店ではなくて、朝になったら壁に沿ってセーターを出して、夜になったら片付けて帰るという感じです。色味もかわいいんですけど、この人たちの自然体な感じが自分は好きです。
佐 藤 この写真が、オーロラが一番はっきり写っているんです。肉眼では白い感じに見えて、撮ったときにやっとこうして現れるんですけど、その中でも一番よかったので、これを選びました。
— どちらもなかなか撮る機会がない1枚ですよね。ミッションに挑戦してみて、ご自身で変化を感じますか。
大 関 私は最近ブラジルに行く機会があったんですけど、自分から話しかけるようになりました。通訳さんもいたんですけど、それでも分からないことを自分で聞けたので、本当にこのツバルへの旅をきっかけに、人との関わりの壁を破っていけるようになったのかなぁと。相変わらず人からどう思われるか考えちゃうんですけど、あまり気にしなくていいかなと思うようにもなりました。
佐 藤 知らなかった世界を見たいっていう好奇心で行ったんですけど、もっと知りたくなりました。風景も全然違いましたし、まずイエローナイフという場所をこの企画で初めて知ったので、いろんな場所にもっともっと行って、自分からいろんな人に話しかけたり、写真を撮ってみたいと思いました。
丁子谷 以前から友達に「自分のことをしゃべらないよね」と言われるのが気になっていて。そうした性格を直したい想いを持って挑んだ旅だったんですけど、改めて自分のことを見つめ直してみたら、無理して全てを直さなくてもいいのかなと思えました。小さな一歩なのかもしれませんが、今回の企画への応募も含めて、自分が思うことや考えていることを外に発信すると、それをちゃんと受け取ってくれる人もいるんだなと感じることができました。
— 帰国後の周りの変化はいかがでしょう。
佐 藤 みんなに『SHUTTER MISSION』のことは伝えていたので、知っていました。「え、どうだったー?」みたいな感じで、旅のことを聞かれたので、みんなに色々と話をしました。ゼミの先生も「よかったね」と言ってくれました。今回のことを相談していた教授には、写真を見せてほしいと。みんな、私の挑戦を応援してくれていたので、帰国して、改めて感謝の思いが大きくなりました。
丁子谷 友達は「どうだった?」って聞いてくれるんですけど、旅に行こうと思った理由を聞かれたときにうまく伝えられていないので、そこが課題です。でも、今回の旅を通して、思っていることを人に話すのは大事だなと感じたので、少しずつ変わっていけたらいいなと思います。
大 関 ツバルは電波が入らなくて5日間くらい一切連絡も取れなかったので、帰ってきたときにみんなから「生きてるの?」って言われました(笑)。あと、友達に、すごく明るくなったというか、楽しそうにしゃべるから、向こうでも楽しかったんだねと言われました。キツかったことも話してたんですけど、それでもすごく楽しそうだねと言われたので、いい思い出になったんだなと気づきました。
— お互いに質問はありますか?
大 関 ツバルの人たちは本当に明るくて、みんなファミリーみたいな感じだから、変に気を遣うこともなかった。でも日本だったら急に泊まらせてくださいって言った瞬間に、言われた側は困惑しちゃう。ツバルではそんなことはなくて、全然ウェルカムみたいな。私は、海外に出て、そういう人間性の違いを実際に感じたんですけど、みなさんは日本との違いをどこかで感じましたか?
丁子谷 エストニアの人たちとコミュニケーションをとる中で、もしかしたら日本人の方がうすい壁のようなものがあるのかなと感じました。海外の方が、伝えるという点ではストレートですよね。あと、いろんな人がいるのは、どこの国でも同じだなと感じました。
— もし次に挑戦する人がいたら、どんなメッセージを伝えたいですか?
大 関 頑張れ!(笑)別に頑張らなくても頑張れちゃうというか、行くと何かしたくなるんですよ。何かしなくちゃじゃなくて、何かしたい、しゃべりたい、伝えたい、とかって私生活ではそれほど起こらないじゃないですか。行ってみないと本当に分からないんですけど、そういう経験はあまりできない。初めて知る場所に行くのと、旅先を決めて行くのとでも全然違いますし。緊張すると思いますが、同じような気持ちになって帰ってきてくれたら私も嬉しいです。本当にいい経験になったので。
丁子谷 興味がある場合は、自分の気持ちを外に出した方が絶対いいなと思います。案外それが他の人に届いたり、共感してもらえたり、こういう機会をいただけたりするので。何かを知っている人生と知らない人生だったら、知っている方が自分の身になりますし、不安があったとしても、何かやりたいと思うのであればぜひ行ってほしいです!自分の人生なので。
佐 藤 人生って一度きりしかないですし、このような経験をさせてもらえるのは本当に限られているので、行きたいと思ったのなら迷わず挑戦してほしいです。その先でどんなことが起こるかは分からないですけど、これから生きていく上で役立つ部分は大きいと思うので、やりたいと思ったら後先考えずに飛び込んでみてほしいです!