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日本

バイオ医薬品分野 開発者

1人でも多くの人に、必要な薬を届けたい。
生産拡大のため、新たな道筋を切り拓く。

新型コロナウイルスの脅威に全世界が立ちすくむ中、富士フイルムは独自の技術を駆使して、総力を上げて新型コロナウイルス感染症対策に取り組んでいる。
バイオ医薬品の生産技術開発の最先端にいる研究者が、これまでのキャリアとその思いを語る。

業界ナンバーワンの企業ならどんな分野でも切り拓いていける

遺伝子を組み換えた微生物や動物細胞に作らせたタンパク質などを活用した医薬品で、副作用が少なく高い効果が期待できる。

物理や化学とは違う“生き物”「生産性10倍」の困難

彼が新たに参画することとなったのは、「バイオCDMO事業」の新プロジェクトだ。「CDMO」(Contract Development and Manufacturing Organization)とは、製薬会社などから、製造プロセスの開発から商用生産までを受託する部門のことだ。特に、バイオ医薬品の生産では高度な生産技術と設備が必要となるため、専門会社に委託するケースが増えている。彼は、グループ会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ:以下FDB)が製造を請け負うバイオ医薬品の生産性を、それまでの10倍に向上させることに取り組むことになった。FDBはバイオ医薬品分野で世界トップクラスのCDMOだ。
バイオ医薬品製造の工程は、1.細胞の作製、2.細胞の栄養源(培地)の供給、3.培養、4.有用なタンパク質の精製、の4つに分かれており、生産性を上げるためにはこれらの要素すべてをベストの状態にする必要がある(図説1)。彼が担当することになったのは3.の培養プロセス。細胞を安定的かつ効率的に育てるためのプロセスの設計者としてプロジェクトに携わることとなった。
「“生産性10倍”の培養プロセスを開発するには新たな視点が求められ、技術的に難しいことばかり。一つの壁を越えるのに1年以上かかることもありました。また、物理や化学と違って、相手は“生き物”です。一般的に明確になっていないメカニズムが多く、コントロールしにくい。私自身も理解が追いつかない。装置の中で1か月間培養した後でないと実験結果が分からないため、トライできる回数も少なく、慎重かつ効率的にプロジェクトを進める必要がありました。環境の違いに慣れると同時に、細胞の本質を理解するまでにはかなりの時間を要しました」
細胞を増やす際に、均一かつ必要十分な量の酸素を与え、かき混ぜるプロセスがある。酸素が多すぎたり、かき混ぜすぎたりすると、細胞は壊れてしまう。「マイルドかつ大量に酸素を与える、絶妙なバランスを保ったプロセスの設計」が必要だ。また、培養液から医薬品に有用なタンパク質を取り出すフィルタリングのプロセスでは、培養期間の1か月にわたってフィルターの詰まりを阻止しなければならないという課題があった。加えて、長期間にわたる連続培養では「同じ品質のものができているか、同じ条件で培養できているか」という観点で細胞の状態を常にチェックする必要があり、その監視や制御も非常に緻密で、労力を要するものだった。
「生産性10倍という目標に対して、私が取り組んでいたプロセスの効率化だけでその4~6割が達成できることが分かっていました。プレッシャーは大きかったですが、自分がやらなければ誰がやるのかという思いで、必死に取り組んでいましたね」

図説1 バイオ医薬品の製造プロセス

壁を乗り越えるためのヒントは富士フイルムの独自技術と企業風土

私にしかできないことがここにある世界の人々の健康に貢献したい

  • * 部署名・インタビュー内容などは、2020年10月時点の取材内容に基づきます。