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日本

化粧品・サプリメント分野 チーフ

お客さま一人ひとりの満足度向上のために

まずは自分が動いてみよう

かつて富士フイルムはデジタルカメラやカメラ付き携帯電話の普及と同時に、売上の大半を占めていた写真フィルムの需要が激減、本業喪失の危機に襲われた。しかし富士フイルムは写真分野で培った技術を活かして、事業を多角化することで大きな前進を図った。独自の技術力に対する誇りは、今の富士フイルムを支える大きな柱のひとつとなっている。
彼が担当するのは、そのように写真で培った技術力を活かして、進出した化粧品とサプリメントの分野における通信販売ビジネスのマーケティングだ。2006年の事業スタート以来、彼のチームは独自の技術力を駆使して生み出された商品を自信を持ってお客さまに届けてきた。しかし、事業が軌道にのりさらに拡大を図ろうとしている今、ただ自分たちが良いと思って作ってきた商品をお客さまにアピールし買っていただくことへ一生懸命になるだけでなく、逆にお客さまからの声を商品やサービスづくりに活かすアプローチも必要なのではないかと彼は考えるようになった。
「参入当時は、お客さまの声に担当者個々人は耳を傾けていたものの、その声を形にする組織がありませんでした。それぞれの商品に対し担当が縦割りで割り振られていて、皆自分の担当商品をどうやったらより多くのお客さまに買っていただけるのか、担当商品の売上をいくら上げられるかということばかりに一生懸命になっていて、お客さまが実際に富士フイルムの化粧品やサプリメントを使う中でどのように感じていらっしゃるのか、実際に使ってみて満足していただいているのかという視点が欠けているのではと感じていました」
彼は社内の会議で、同僚に、あるいは上司に、自分の抱えている問題意識を度々口にした。しかし言ってはみるものの、あまり相手にはされず、「どうして他の皆は自分の言っていることを分かってくれないんだ」と不満さえ感じていた。
あるとき、いつものようにその問題意識を口にする彼に上司が言った。
「問題意識を持つのは素晴らしいことなんだけどさ。じゃあ具体的にどうするか、考えたことはある?何か自分で行動してる?」
この一言に、彼はハッとした。問題を他人のせいにしている自分に気付いたのだ。問題提起をしてみても、具体的な行動が伴っていないならば、それは何も考えていないことと同じだ。まずは何からでもいい。より理想とする姿を目指して、自分ができることをとにかくやってみようと、彼は決心して立ち上がった。

いいものを作り出す企業であるとともに、求められることにこたえられる企業へ

トップを巻き込み、会社全体を導いていく活動へ

お客さまの声を取り入れ、自分たちの商品やサービスへ活かしていく、そしてその状況をお客さまへオープンに伝え、お客さまとの双方向の関係を築いていく。写真分野でのビジネスの歴史が長い富士フイルムには、他社を圧倒する技術力で世界のマーケットを勝ち抜いてきた長い歴史がある。しかしお客さまとの距離が近い通販ビジネスを展開する上では、お客さま一人ひとりとの信頼関係を築くことこそが化粧品・サプリメント事業の長期的な売上の向上につながると彼は確信していた。
お客さまとの信頼関係を築いていくためには、お客さまの要望に真摯に向き合うそれぞれの社員の姿勢が不可欠だ。そのことを会社全体にわかってもらうにはどうすればいいか。各担当者と根気強く話をして、理解してくれる仲間を増やしていくことも考えたが、彼がとったのはトップダウンで一気に全体を導く方法だった。つまり当時若手だった彼が最初に考えをプレゼンしたのはほかでもない、彼の所属する化粧品・サプリメント関連事業会社のトップ、社長だった。
「社長自身も『お客さま満足度を向上させる』ことを目標として掲げており、社長が納得できる具体策を提示できれば、会社全体を巻き込んだ大きな活動にできるチャンスだと思いました。ただし今回提案する具体策は、良いことも悪いこともすべてをお客さまにオープンにするコミュニケーションを取るという、ある意味リスクを伴うともとらえられる提案だったため、会社の代表として社長がリスクを取って意思決定してくれるかという不安もありました」
与えられた時間は社長の打ち合わせの合間をぬった30分。社長に直接プレゼンできるこんなチャンスは二度と巡ってこないかもしれない。社長に直接プレゼンしようと決めてからは、これまで蓄えた知見を総動員して説得力のある提案をぶつけたいと必死で作業を進めた。
「そのなかで自分は何を成し遂げたいか、そのために具体的に自分は何をするのか、プレゼンテーションをブラッシュアップしていくうちに、漠然としていた自分たちの化粧品・サプリメント事業の未来が、ようやくはっきりとした輪郭をもって見えてきました」
そして遂に迎えたプレゼン当日。彼は社長に訴えかけた。お客さまのニーズに積極的に向き合いこたえていく姿勢を一層強化していく必要性。そうしてお客さまとの絆を深めていくからこそ実現できる、富士フイルムの継続的な成長。社員一人ひとりがお客さまと真摯に向き合えるよう、会社全体で取り組む必要があるため、社長の立場からも社員へ方向性を示すことに協力してほしいこと。お客さまの声を社内で取り入れていくための商品を横断した組織づくりを行い、その組織に社長も参加してほしいこと。具体的な戦略や提案とともに、彼がずっと考えてきた想いをぶつけた。彼の発する言葉には事業を自分が引っ張っていくという覚悟と自信があった。彼の言葉を聞いた社長は、彼の目を見て言った。「就任当時から、私もお客さまにより満足してもらえる製品・サービスを届けることを目標にしてきた。富士フイルムを次の成長ステージに乗せるためのチャレンジとして、今回提案してくれた企画を実現させて、一緒にお客さま満足度No.1の会社を目指そう」
それからすぐに彼を発起人として「お客さま満足度向上委員会」という組織が発足された。それまでは関係部門に振り分け個別に伝達されていたお客さまの声を、部門を横断して結成されたチームですべて共有する。月1回、社長も役員も必ず参加し、「今お客さまはどんなことを望んでいるのか」と全員で向き合うことにした。無論、貴重な声は共有して終わりではない。大事なのはそれを基に、きちんと新たな商品やサービスに活かすこと。新たな商品開発や日々のビジネスに追われ、これまで向き合いきれなかったり、実現が難しくて諦めてしまっていた要望にもできるだけこたえようと、部門横断的に課題解決や意見反映を行っていった。また彼は、寄せられるお客さまの声に対して会社がどのように検討したかをお客さまにすべて知ってもらうための小冊子『きずな通信』も立ち上げた。『きずな通信』では、お客さま満足度向上委員会での取り組み内容が写真やイラストとともに紹介され、お客さまに届けられている。

お客さまの声こそが、事業も人も動かす原動力となる

  • * インタビュー内容などは、2017年5月時点の取材内容に基づきます。